投資の考え方3-ポートフォリオ運用の資産クラス

2021/01/13

投資の考え方

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主要な資産クラスリターン実績 マトリックスイメージ

前回の記事で、資産分散を活用した投資リスクのコントロールが有効であることについて整理しました。つまり、価格変動の異なる複数の資産への分散投資を行うことによって、運用の期待リターンを変えることなく、より低リスクのポートフォリオ投資が可能となります。

    投資の考え方2-リスクをどのようにコントロールするか?

ここでは、運用の際にポートフォリオにどのように資産を組み合わせればいいのか、資産クラスごとのリスクとリターン関係について確認をしておきたいと思います。

資産クラスによるリスク・リターンの違い

投資におけるリスクとはリターン(収益率)のブレを指し、通常は標準偏差という数値で表すことを、前回確認しました。資産運用とは、「このブレ(リターンの変動)を許容しながら(=リスクを取りながら)期待リターンを目指す」ということになります。

一般に、リターンが低い資産クラスはリスクも低く、リターンが高い資産はリスクも高くなります。つまり、リターンとリスクは正比例の関係にあります。「リスクは低いけど、こんなに高いリターンが期待できますよー」というような怪しい投資商品の勧誘を受けたら、大いに疑ってみる必要があります。

では、長期的な資産クラス毎の期待リターンはどのくらいなのでしょうか。
以下に、J.P.モルガン・アセット・マネジメントが公表する今後10~15年の期待リターンとリスクの予想を載せてみます。(参照情報:J.P.モルガンの超長期市場予測

J.P.モルガン・アセット・マネジメントによる今後10~15年の主要アセットクラス期待リターン予測

アセットクラス期待リターン想定リスク
日本大型株式5.1%17.94%
先進国株式 (除く日本)3.4%19.60%
新興国株式5.8%23.03%
日本国債0.4%2.18%
先進国国債 (除く日本)0.3%8.85%
新興国国債3.8%12.24%
ハイイールド債券 (米国)3.4%12.97%
米国REIT5.1%17.31%
グローバルREIT (除く米国)5.7%18.68%
(2020/9/30時点データ、円ベース、為替ヘッジ無)

誰も将来について正確に当てることはできません。金融機関によるひとつの予想ではありますが、大まかな目安として水準感を掴むのに参考になります。予測レポートでは、各資産クラス間の相関係数についても公表しており、資産分散について検討する際に役立つと思っています。

各資産クラスのリスクとリターンの関係を図にしてみます。

主要な資産クラスのリスクリターンの関係グラフ

上記はJ.P.モルガン・アセット・マネジメントにより長期予測をもとにしていますが、過去長期間にわたっての実際の価格変動からの値を使っても似たような分布になります。リスクをとることではじめてリターンが得られることがわかります。

株式は全体として右上に分布しハイリスク・リターンである一方、日本や先進国の国債は左下に分布し低リスク・低リターンであること、新興国債券やハイイールド債券はその中間であることが分かります。

資産クラスの実際のパフォーマンス

当たり前ですが、毎年の実際の各資産クラスのパフォーマンスはバラバラで、どの資産が儲かるかは誰にも事前には分かりません。実は上の超長期期待リターン予測についても、毎年見直された数値が公表されているくらいです。

ここでは、運用実績の長い投資信託eMAXISシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)を用いて、各資産クラスの過去のリターン実績を確認したいと思います。下記の資産クラス毎に対象eMAXISシリーズを用いて、2010年から2020年までの各年の年率リターンを確認します。(近年、信託報酬の低いeMAXIS Slimシリーズが導入されて人気が高いと思いますのが、より長期の運用実績のあるeMAXISシリーズを今回使用しています)

アセットクラス使用した投資信託データ
日本株式eMAXIS TOPIXインデックス
先進国株式eMAXIS 先進国株式インデックス
新興国株式eMAXIS 新興国株式インデックス
日本債券eMAXIS 国内債券インデックス
先進国債券eMAXIS 先進国債券インデックス
新興国債券eMAXIS 新興国債券インデックス
日本REITeMAXIS 国内リートインデックス
先進国REITeMAXIS 先進国リートインデックス

2010年から2020年までの年率リターンは以下のようになります。

主要な資産クラスのリターン実績推移グラフ
リーマンショック後の過去10年を見ても、年によってかなりパフォーマンスにバラつきがあること、株式クラスの方が債券クラスに比べて遥かに変動幅が大きいことが直ぐにわかります。また、同じ株式、あるいは債券であっても、新興国資産の方が先進国資産に比べて変動幅が大きいことも見てとれます。

年ごとにパフォーマンスの良かった資産クラスを判別しやすくするために、それぞれの年においてリターンの良かった順に資産クラスを並べたマトリックス図をつくってみました。
主要な資産クラスの年率リターン実績 マトリックス図解

こうして見てみると、パフォーマンスが良好な資産クラスが年によって次々と入れ替わってきているのが理解できます。

このことが、リスク低減のための分散投資に加えて、リバランスを考慮しながらポートフォリオ運用を行っていくことが大切となる背景といえます。


今回は、ポートフォリオ運用の対象となる各資産クラスのリスク・リターンの違い、そのリターンの過去実績について確認していみました。次の記事にて、どのように資産を組み合わせててポートフォリオ運用を行っていくか、そのアセットアロケーションをどのように考えていくかについて整理していきたいと思います。

  投資の考え方4-ポートフォリオ運用のアセットアロケーション


なお、主な資産クラスの期待リスク・リターンおよびリターン実績の2022年度版アップデートについてはこちらの記事をご参照ください。

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

投資スタンスについてはこちらをご覧ください。

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