ここでは、具体的なポートフォリオの用い、実際にそのリスク値を確認してみます。アセットアロケーションによるリスク低減効果を確認し、どのように資産クラスを組み合わせてポートフォリオ運用を行っていけばよいのかということを考えてみたいと思います。
分散投資によるリスク低減効果
投資する資産クラスによりリスク・リターンの関係がが大きく異なることを、前回確認しました。これらの資産クラスをうまく組み合わせたアセットアロケーションを行うことで、リスク対比で好リターンが期待できる効率的なポートフォリオ運用が図れることになります。
資産クラス毎のリスク・リターン値として、前回ふれた J.P.モルガン・アセット・マネジメント公表の今後10~15年の期待リターンとリスクの予想を利用してみます。
J.P.モルガン・アセット・マネジメントによる今後10~15年の主要アセットクラス期待リターン予測
日本大型株のみに投資をした場合、期待されるリターンは5.1%、想定のリスクは17.9%です。これらは長期的な運用の想定値ですが、仮に1年間の数値だとすると、100万円を投資して、1年後に平均で105万1,000円、68%の確率で82万1,000円から117万9,000円までの間になるということを表しています。(投資の考え方1-基本はリスクをコントロールしてリターンを得ること をご参照ください)
平均的に相応のリターンが期待できる一方で、そこそこのリスク、つまりブレが起こり得る状況だといえます。そこで、運用資金の半分を、日本大型株との相関が低く、かつ、同じような水準のリターンが期待できる米国REITに投資してみた場合はどうなるでしょうか。
日本大型株と米国REITの相関係数 0.63 を用い、以前の記事で触れた二つの資産へ投資した場合のリスク値計算式に当てはめることにより、日本大型株50%、米国REIT50%の投資ポートフォリオの期待リターンは5.1%、想定リスクは15.9% と計算できます。
二つの資産への投資によって、日本大型株のみへの投資と比べ期待リターンは5.1%で不変である一方、想定リスク値が17.9%から15.9%へ低下することが確認できました。これが正に分散投資によるリスク低減効果です。
ポートフォリオ運用のリスク・リターン
続いて典型的な分散投資として、日本、先進国、新興国の株式と債券に1/6ずつ投資したポートフォリオ運用の場合のリスク・リターン値を計算してみます。これには、上記のアセットクラス毎のリスク・リターン値のほか、J.P.モルガン・アセット・マネジメントが公表している各資産間の相関係数を用います。ここでは詳しく触れませんが、Excelを使って計算が可能です。計算は少し複雑ですが、行列を理解しているようであれば、分散共分散行列を作成し割合簡単に計算できます。
日本、先進国、新興国の株式と債券に1/6ずつ投資したポートフォリオのリスク・リターン
ポートフォリオ運用のアセットアロケーション
投資運用にあたっては、同じリスクをとるのであれば、期待リターンがなるべく高い運用を行いたいものです。アセットクラスのさまざまな組み合わせの中で、同じリスク値で最も高い期待リターンの得られるポートフォリオのリスク・リターングラフ上の点を結んだものをポートフォリオ理論において効率的フロンティア曲線と呼びます。
ポートフォリオ理論では、この効率的フロンティア曲線上のポートフォリオの中から、リスク許容度に応じてアセットアロケーションを決めていくのが最も良い(=効率的)ということになります。ただしここでの大きな注意点は、効率的フロンティア曲線は、前提となる各アセットクラスのリスク・リターン想定値、および、相関係数によって当然ながら変わってくることです。
あくまであるひとつの前提のもとで算出しているものであることから、実際の運用を考える際に、あまり厳密さを求めてもしょうがない部分があります。こうした点を踏まえ、自身のリスク許容度を考慮し期待リターンを理解した上で、資産クラス毎の好み等も加味してアセットアロケーションを決めていくのが実際のところと思っています。
現在の長期分散ポートフォリオのリスク・リターン
最期にハッピーリタイアライフに向け現在運用中のポートフォリオのリスク・リターン値を確認してみます。
昨年12月以降、大幅に上昇した米国金融株等をかなり売却しドルMMF(先進国債券)として保有していることから、(あくまで、 J.P.モルガン・アセット・マネジメントの想定値前提ですが)現状、やや期待リターン、およびリスク値が低い状況です。
ただ、今早期リタイアができる程度の資産を既に築き、さらに今後のハッピーリタイアライフに向けた積み上げを目指している身として、現在のように市場が好調でリスクにやや鈍感になっている環境においては、ある程度リスクを抑えたまったり運用でよいと考えています。
今後、グローバル市場の調整がみられるようになった際に、また海外株式やREIT資産を増やしていきたいと考えています。
0 件のコメント:
コメントを投稿