前回、投資のリスクとは何かについてまとめてみました。つまり、投資の世界のリスクとはリターン(収益率)のブレを指します。
投資の考え方1-基本はリスクをコントロールしてリターンを得ること
それでは、そのリスクはどのようにコントロールできるのでしょうか?
ここでは、投資のリスク・コントロール、分散効果について自身の考え方をまとめてみます。
資産の分散効果
リターンの変動をなるべく抑えた運用をするためには、複数の資産を組み合わせて資産の分散をはかった投資が良いといわれています。これはどのようなことなのか、二つの資産の例で理解をしていきたいと思います。
ここで、価格の動きが全く逆となる二つの資産、商品Aと商品Bへの投資を考えます。下記の図はそれぞれの資産へ単独で投資をした場合と、二つの資産へ組み合わせて投資をした場合の価格変動を表しています。
いずれの商品も価格が変動していますが、組み合わせた投資の変動が明らかに小さいことが分かります。一方の商品が値下がりしても、他方の商品が値上がりしてうまくカバーをしているからです。
ここでは価格変動が完全に逆である二つの資産の例でしたが、一般的に、価格変動性の異なる二つの資産を組み合わせた投資をすることで、それぞれ単独で投資をするのに比べリスクが小さくなるといえます。
分散投資の資産は何でもいいわけではない?
では、分散効果を得るにはどのような資産がよいのでしょうか。
まず、二つの資産で考えてみます。少し数学的な話になってしまいますが、商品Aと商品Bの二つの資産へ投資をした場合、そのリターンとリスクは下記のように計算されます。
(商品Aへの投資割合をX、商品Bへの投資割合をYとします)
二つの資産へ投資した場合のリターン
二つの資産へ投資した場合のリスク
リスクの計算式に相関係数というものが出てきます。相関係数は、二つの資産の相関の強さ、つまり価格の動きがどの程度同じ方向かということを、マイナス1から1までの間の数値で表すものです。二つの資産が同じような動きをする場合は1に近い数値、先ほどのグラフの例のように、互いに逆の動きをするような場合はマイナス1に近い数値、互いに無関係に動く場合はゼロに近い数値となります。
この式から理解できることは、なるべく相関係数が小さい資産を組み合わせることで、リスクが小さくなるという点です。同じリターン水準を目指す場合でも、相関係数がゼロに近い、さらに言うとマイナス圏の資産を組み合わせることで、そうでない資産の組み合わせに比べ、リスクを低減させた投資が可能となるのです。
ポートフォリオ運用による分散効果
ここでは二つの資産について確認しましたが、複数資産を組み合わせた投資においても、なるべく相関係数の小さい、つまり変動性の異なる複数の資産を組み合わせることで、同じリターンを得るにしても全体としてのリスクが小さくなることが数学的に説明できます。このことが、現代ファイナンスのポートフォリオ理論による分散効果、リターンを減らさずリスクだけを減らす唯一の方法なのです。
2008年のリーマンショックの際には、結局ほとんど全ての資産の価格が下落し、投資における資産分散はあまり意味がないなどの声も聴かれました。とはいっても、当時、高格付けの債券クラスなどは明らかに株式市場に比べて変動幅が小さく、回復にあたっても株式とは異なる動きを見せていました。
繰り返しになりますが、相関が低い資産を組み合わせたポートフォリオ運用によって、リスクをより小さくした運用が可能なことは、数学的な事実なのです。リーマンショック級の極めて大きな市場変動時においても、ポートフォリオ運用の資産分散効果は相応に発揮されるものととらえ、自身の投資におけるリスクコントロールに努めたいと考えます。
今回は、資産分散が、投資のリスクコントロールにおいて有効であることを確認しました。次の記事にて、ポートフォリオ運用にあたっての具体的なアセットクラスについて考えたいと思います。
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