早期利下げ観測の後退で米長期金利が3月以来の水準へ上昇。アップルほか、米ドル建長期債券を購入

2023/05/31

投資-債券

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2023年3月の金融機関の破綻をきっかけに欧米では金融システム不安が広がり、それまでの急激な金利引き上げの負の側面が意識され始めました。特に米国では最近の物価指標の下ブレに伴い、利上げの停止、さらには年内の早期の利下げ観測までもが広がりつつありました。こうしたなかで米国10年国債金利は3月以降、3.5%を下回る水準での推移もみられるようになりました。

ところが、2023年5月に入ると状況は一変します。米国経済の底堅さを示すような経済指標の公表が続き、市場に広がっていた年内利下げ観測が急速に弱まりました。米国の長期金利はぐんぐんと上昇し、米10年国債は3月以来となる3.8%台まで到達しました。

このようなタイミングをとらえ、過去に配当やドル資産の売却によってたまっていたドル資金を使って、米ドル建て長期債券の購入を進めました。

米国債は長期的にみて極めて魅力ある投資水準に

次のグラフは、2005年以降2023年5月まで約19年間の米国10年国債と2年国債の利回り推移です。

2005年以降の米国10年国債と2年国債金利の推移(2005年~2023年5月)米国10年国債と2年国債金利の推移(2005年~2023年5月)

2000年以降、新型コロナ感染症拡大前の2019年まで、米国の物価はとても安定した状態を保っていました。インフレ率は上がったとしてもコアインフレ率で2%台ほどまでと、安定成長が続いていました。

そうしたなか、その間の米国長期金利も、とても落ち着いた動きをみせてきました。2007-08年のサブプライム不動産バブル期以降、米国10年国債金利は1%後半から3.5%後半までのレンジ間の動きが長いあいだ続きました。

ところが、2020年の新型コロナウィルス感染症拡大を発端とした経済の低迷、そしてインフレ発生により、そのレンジ内推移は完全に終わりました。米国10年国債金利は一旦0.5%程度まで下落したのち、米連邦準備制度理事会(FRB)によるインフレ対応の利上げ政策を受け、2021年に入ると急ピッチで上昇をはじめました。2022年に入っても上昇スピードは収まらず、2022年終りには4%台と2008年以来となる水準まで一気に上がりました。

過去1年間の米国10年国債と2年国債金利の推移(2022年6月~2023年5月)米国10年国債と2年国債金利の推移(2022年~2023年5月)

2023年3月に入ると、金融機関の破綻をきっかけに金融不安が広がり、それまでの米連邦準備制度理事会(FRB)による急激な金利引き上げの負の側面への意識も高まりました。物価指標の下ブレなども受け、年内にも利下げが始まるのではとの観測も広がりました。

米10年国債金利は3.5%近辺まで急低下し、4月までは3.5%を挟んだ水準での推移となりました。5月に入ると、米国経済の底堅さを示すような経済指標の公表が続き、市場に広がっていた年内利下げ観測が急速に弱まりました。5月終わりにかけ米10年国債金利は再び3.8%まで上昇し、サブプライムバブル以降の長期的レンジの上限に近付きました。現在は、過去15年来の極めて魅力的な債券投資の環境であるととらえることができます。

米国債イールドカーブは逆イールド形状が続く

イールドカーブとは「債券の利回り曲線」のことです。横軸に債券の残存期間、縦軸に利回り(金利)をとり、債券の残存期間と、それに応じた債券利回りとの関係を曲線で示すものです。

経済環境や金融政策の動向、それを受けた債券市場における投資家の行動などにより、この曲線、イールドカーブの形状は変化します。残存期間の短い債券と長い債券の金利差が拡大してカーブが急(スティープ)になったり、金利差が縮小してカーブが平坦(フラット)になったりします。場合によっては、短期債の利回りが長期債の利回りを上回る逆イールドになったりもします。

イールドカーブの逆イールド状態は、一般的に景気後退入りを示唆すると言われています。好景気が長く続くと、金融当局の利上げが進み短期金利が押し上げられます。そうした状況で、将来の景気減速が相応に見込まれ、長期セクターへ投資資金が流入すると、長期金利の押し下げが進み、逆イールドが発生します。

現在の米国債のイールドカーブは、残存2年程度までの金利が10年など長期金利を上回る逆イールド形状となっています。

下記グラフにて、2020年12月、2021年12月、2022年に入って3月、6月、12月、2021年12月、そして直近2023年5月の、合計6本のイールドカーブを示しています。

米国債のイールドカーブ(利回り曲線)変化(2020年12月から2023年5月)米国債のイールドカーブ(利回り曲線)変化(2020年12月から2023年5月)

米ドル建て長期債券を購入(アップル社債、インテル社債)

現状のイールドカーブ形状を見ると、逆イールド形状によって、残存3年程度までが4%を大きく超える極めて高利回りとなっています。短期的な投資目線の場合は、このような年限セクターへの投資が魅力的だといえます。

一方、長期投資家の目線としては、現在の高金利を長期間にわたって享受したいとの発想になります。イールドカーブの10年超の部分をよくみると、残存20年ほどが金利がやや高くなっていることが分かります。

次のような点を思い、5月末近くになって、アップル社債を購入しました。

  • 残存18年弱とイールドカーブの「美味しい」部分の金利を長期間享受できる
  • AA+(S&P)/ Aaa(Moody's)と極めて高格付
  • 早期償還条項が付いていることもあり、米国債に対して0.4%近い高いスプレッド(利回り上乗せがある)
  • 4.3%を超える高利回り

なお、アップル社債には早期償還条項(コーラブル条項)があり、アップル社の意向により債券期限到来前に償還となってしまう可能性があります。ただ通常は、市場金利が低下した環境での早期償還が想定されます。市場金利が高い環境では、アップル社にとって、より高い金利での代替資金調達を図る必要がでてきてしまうからです。

金利が低下した環境であれば、米国債利回り+0.125%で計算される債券価格が額面金額100%を上回ることになります。そうした価格で早期償還されるということは、ある意味、債券を期限前に利食うことと同じととらえることができます。これを許容できると考えれば、早期償還条項は問題なく受け入れられます。

アップル社債

銘柄アップル
米ドル建社債(シニア債)
債券格付AA+(S&P)
Aaa(Moody's)
利率(クーポン)年 2.375%
期間約17.7年
償還期限2041年2月8日
償還価格額面金額の100%
早期償還条項額面金額の100%または米国債利回り+0.125%で計算される価格のいずれか高いほうで、発行体が早期償還する権利あり
投資利回り年 4.323%

アップル社債購入の少し前に、インテル社の社債を購入しました。こちらは、格付けがA(S&P)/ A2(Moody's)であることから、リスクを考え、10年弱と少し短い年限のものを選びました。それでも米国債に対して0.9%を超えるスプレッド(利回り上乗せ)があり、4.37%の高い投資利回りと魅力的です。

インテル社債

銘柄インテル 米ドル建社債
(グリーンボンド)
債券格付A(S&P)
A2(Moody's)
利率(クーポン)年 4.150%
期間約9.2年
償還期限2032年8月5日
償還価格額面金額の100%
早期償還条項額面金額の100%または米国債利回り+0.25%で計算される価格のいずれか高いほうで、発行体が早期償還する権利あり
投資利回り年 4.378%

今回の購入資金は、過去に投資した商品の売却資金や配当を米ドル建MMFにて保有していたものです。ドル建MMFにおける待機資金はまだまだありますので、今後の金利動向を見極めながら、追加の投資機会を探りたいと思います。

投資環境がやや不透明な中、株式市場が不安定な動きを続けています。債券セクターの投資で一定の利回りを稼ぐことが、分散ポートフォリオの安定に大きく役立つと考えています。

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

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