2023年4月の金融市場を振り返る-グローバル投資市場と主な資産クラスの動向確認

2023/04/30

投資-市場動向

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2023年4月の市場動向を振り返る

3月に欧米で広がった金融システム不安は、一旦落ち着きをみせています。米国では物価指標の下振れに伴う利上げ停止観測が一時的に広がりましたが、労働需給は引き続きひっ迫気味で、インフレ動向も不透明感が残っています。欧州ではロシアによるウクライナ侵攻の長期が経済活動の重しとなっている一方、失業率は引き続き過去最低水準で、景気は堅調を保っています。

こうした環境下、4月の株式市場は神経質ながらも底堅く推移してきました。金融引締めの影響や、金融システム不安に伴う貸し渋りなどの影響が今後は懸念されますが、現時点では景気腰折れ懸念は後退しています。

特に日本株については、円高ドル安の進展や、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による日本株への追加投資観測などもあって、相対的にパフォーマンスが良い月となりました。

4月終わりには、植田日銀総裁による新体制になって初めての日銀金融政策決定会合が開かれました。植田新総裁がどのような政策を語るのかが注目され、長期金利を一定水準に保つイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の見直しなどへの思惑も一部にはありました。

会合後の植田総裁会見では金融緩和の出口への具体的な道筋の言及はなく、結果として市場には長期間の緩和継続観測が広がりました。円金利が低水準に留まるとの観測を受け、為替市場では円が一段安となり、134円台にあった米ドル円為替レートは会見後に一気に136円台となりました。

5月に入ると直ぐに、米国で米連保公開市場委員会(FOMC)、欧州で欧州中央銀行(ECB)理事会が開かれます。FOMCでは0.25%の利上げが市場コンセンサスとなっている模様ですが、FOMCにて利上げ打ち止めが示唆されるかどうかが注目されます。

不透明なインフレ動向、これまでの各国の金融引締めによる影響、それらに対応する各国中央銀行の金融政策スタンスなど、気になることが多くなっています。年初来、株式市場は相応の水準まで上げてきていることもあり、今後しばらくは神経質な展開に注意が必要です。

2023年4月の各金融市場の動向確認

株式市場

S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較グラフ

S&P500、Nasdaq、TOPIX指数のパフォーマンス比較グラフ(2022年初~2023年4月末)
  • 米国株式S&P500指数は月間プラス1.5%、Nasdaq総合指数は月間で横ばい
    金融システム不安は一旦落ち着き、不安心理は後退しているものの、インフレ動向や米連邦準備理事会(FRB)の金融政策スタンスには不透明感が残ります。株式市場は神経質ながらも底堅く推移。3月に大きく上昇したNasdaq総合指数は横ばい、S&P500指数は月間プラス1.5%と小幅高となりました。

  • 日本株式は月間プラス2.7%
    欧米株式に比べ出遅れ感のあった日本株式は、月末にかけての為替市場の円安進展などもあって、プラス2.7%となりました。

債券市場

日米10年国債金利の2022年初来の推移グラフ(2023年4月末時点)

日米10年国債金利の過去1年の推移比較グラフ(2023年4月末時点)

  • 米国10年国債金利は、ほぼ横ばいの3.43%
    物価、労働市場や経済指標の発表を受けての方向感の出ない展開が続き、米国10年国債金利はほぼ横ばいで終えています。

  • 日本10年国債金利は 0.38%
    植田新日銀総裁によって金融緩和政策が修正されるとの思惑などから、日本10年国債金利は4月中概ね0.4%台後半で推移していました。月末の植田新総裁による初めての日銀金融政策決定会合後の会見では、金融緩和の出口への具体的な道筋の言及はありませんでした。結果として、市場には長期間の緩和継続観測が広がり、長期金利は0.3%台へと急低下しました。

為替市場

米ドル円為替レートと米10年国債金利の2022年初来推移グラフ(2023年4月末時点)

米ドル円為替レートと米10年国債金利の過去1年の推移グラフ(2023年4月末時点)

  • 米ドル円は3.5円の円安となる136円台、ユーロ円は2008年来の150円台
    月中は方向感のでない展開が続いていましたが、月末の植田新日銀総裁の発言を受け、長期間の緩和継続観測が広がると、2年以上円安が進み136円台となりました。ユーロに対しては月間6.2円の円安が進み、ユーロ円為替レートは2008年来となる150円台にのせています

商品市場

WTI原油先物価格と金先物価格の2022年初来の推移グラフ(2022年初~2023年4月末)

WTI原油先物価格と金先物価格の推移グラフ(2022年初~2023年4月末)

  • 原油価格は月間プラス1.5%、金価格はプラス1.5%

続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。

グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年4月末時点)

株式市場
指数2023年
4月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
S&P 5004,169.481.5%8.6%
Nasdaq12,226.580.0%16.8%
東証TOPIX2,057.482.7%8.8%
ドイツ DAX15,922.381.9%14.4%
英国 FTSE1007,870.573.1%5.6%
香港ハンセン19,894.57-2.5%0.6%
上海株価指数3,323.271.5%7.6%
Dow Jones34,098.162.5%2.9%
日経平均株価28,856.442.9%10.6%
東証REIT指数1,873.454.9%-1.1%

為替・金利市場
指標2023年
4月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
米ドル円 為替レート136.283.49円5.17円
ユーロ円 為替レート150.186.25円9.87円
英ポンド円為替レート171.187.41円12.58円
豪ドル円 為替レート90.121.35円0.79円
ドルインデックス101.40-0.78-1.87
米国10年国債金利3.43%-0.04%-0.45%
日本10年国債金利0.38%0.05%-0.04%

商品先物市場
商品先物2023年
4月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
WTI原油 (ドル/バレル)76.781.5%-4.6%
(ドル/トロイオンス)1,999.101.5%9.5%
(ドル/トン)8,596-4.4%2.7%

最後に、主な資産クラス毎のパフォーマンス動向を確認しておきたいと思います。

主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年4月)

これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。

以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年4月のパフォーマンスを表示しています。

主要な資産クラスの2023年4月実績
主要な資産クラスの月間パフォーマンス(2023年4月)
※新興国債券クラスのみ、eMAXIS Slimeシリーズは存在しないため、eMAXIS新興国債券インデックスを用いています。対象として用いたemaxisシリーズについては、過去の記事をご参照ください。(参照記事:投資の考え方3-ポートフォリオ運用の資産クラス

続いて、各資産クラスの2022年初から過去約1年間の動向を見てみます。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2022年1月~2023年4月)

2023年初からの動きをクローズアップします。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2023年初~2023年4月)
月間では日本REITクラスがプラス5.1%と大きく上昇しました。全ての資産クラスが2022年初来パフォーマンスではプラスとなりましたが、2021年初からのパフォーマンスではまだ多くの資産クラスがマイナス圏にあります。

なお、長期分散投資ポートフォリオの2023年4月の運用実績についてはこちらの記事をご覧ください。

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

投資スタンスについてはこちらをご覧ください。

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