2023年3月の市場動向を振り返る
3月の金融市場では、米欧の銀行経営の混乱によって金融システム不安が一気に広がりました。投資家心理が悪化し、3月半ばに市場は急落しました。その後は金融当局がいち早く対策を打ち出したことで、月末にかけて大きく値を戻す動きとなりました。
金融システム不安の発端は、3月10日の米カリフォルニア州の中堅銀行シリコンバレー銀行の経営破綻です。更に12日に、ニューヨーク州のシグネチャー銀行も預金流出が加速して破綻に追い込まれました。
欧州では、金融大手クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジナショナル銀行が同行への追加出資を拒否したのと報道が伝わり、クレディ・スイスの経営の先行きに不安が高まりました。15日の報道を受け、かねてから巨額の取引損失などで赤字決算を見込んでいたクレディ・スイスの株価は、30%の下落をみせました。
これらは個別の金融機関の流動性問題ととらえられるものの、それが金融システム全体への不安感として広がっていく中で、金融当局は極めて素早い動きをみせました。米国では金融当局が破綻銀行の預金全額保護を直ぐに決め、また、買収先の金融機関との交渉を早々にまとめました。スイス国立銀行(中央銀行)もクレディ・スイスへの資金供与を即日決定し、さらに、数日後にスイス最大の銀行であるUBSとの買収を公表しています。
3月末時点では、市場は全体としてまだ不安定感が残るものの、金融当局の対応も助けとなり、株式市場では買い戻しが続いています。債券市場では金利低下が大幅に進み、それに伴う日米金利差縮小の影響で、為替市場は米ドル安円高方向へ振れています。
昨年来の高インフレ対応の利上げが、個別金融機関に対してとはいえ悪影響を与え始めていることがみえ、今後の利上げ姿勢に影響がでてくるとの思惑が広がりました。インフレが直ぐに収まらないなかで、金融当局にとっては難しいかじ取りがこれから続くことになりそうです。
2023年3月の各金融市場の動向確認
株式市場
S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較グラフ
- 米国株式S&P500指数は月間プラス3.5%、Nasdaq総合指数はプラス6.7%
欧米金融機関の混乱から一時的に広がった金融システム不安に対し、金融当局の対応が早かったこともあり、株式市場は3月前半の下落から反転し月間プラス圏に浮上。特に金利低下が進んだこともあり、昨年終盤に売り込まれていたハイテク銘柄などへの買いが広がり、Nasdaq総合指数は月間6.7%と大きく上昇しました。
- 日本株式は月間プラス0.5%
3月前半の下げがきつかった日本株式は、為替市場の円高進展などもあって戻りがやや鈍く、小幅高で終えました。
- 米国10年国債金利は月間で0.47%低下し、3.4%台に
金融システム不安が広がり、今後の利上げが難しくなるとの思惑もでてききたことで、2月に大きく上昇した米国長期金利は大幅に低下。米国10年国債金利は、前月比0.47%低い3.47%で終えています。
- 日本10年国債金利も月間で0.17%低下し、0.33%
欧米で金利低下すすむなかで、年初から日銀の許容変動幅の上限である0.5%程度に貼りついていた日本10年国債金利も、0.33%まで低下しました。
- 米ドル円は3.4円の円高となる132円台
米国の金利が大幅に低下し日米金利差が縮小したことから、為替市場では米ドル高円安が進みました。一時138円近辺まで戻していた米ドル円為替レートは、132円台となりました。
商品市場
WTI原油先物価格と金先物価格の2022年初来の推移グラフ(2022年初~2023年3月末)
- 原油価格は月間マイナス1.8%、金価格はプラス7.2%
金融システム不安が広がったことで、有事の金の思惑もあり、金価格は急騰しました。
続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。
グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年3月末時点)
為替・金利市場
主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年3月)
これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。
以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年3月のパフォーマンスを表示しています。
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