2023年3月の金融市場を振り返る-グローバル投資市場と主な資産クラスの動向確認

2023/04/02

投資-市場動向

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2023年3月の市場動向を振り返る

3月の金融市場では、米欧の銀行経営の混乱によって金融システム不安が一気に広がりました。投資家心理が悪化し、3月半ばに市場は急落しました。その後は金融当局がいち早く対策を打ち出したことで、月末にかけて大きく値を戻す動きとなりました。

金融システム不安の発端は、3月10日の米カリフォルニア州の中堅銀行シリコンバレー銀行の経営破綻です。更に12日に、ニューヨーク州のシグネチャー銀行も預金流出が加速して破綻に追い込まれました。

欧州では、金融大手クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジナショナル銀行が同行への追加出資を拒否したのと報道が伝わり、クレディ・スイスの経営の先行きに不安が高まりました。15日の報道を受け、かねてから巨額の取引損失などで赤字決算を見込んでいたクレディ・スイスの株価は、30%の下落をみせました。

これらは個別の金融機関の流動性問題ととらえられるものの、それが金融システム全体への不安感として広がっていく中で、金融当局は極めて素早い動きをみせました。米国では金融当局が破綻銀行の預金全額保護を直ぐに決め、また、買収先の金融機関との交渉を早々にまとめました。スイス国立銀行(中央銀行)もクレディ・スイスへの資金供与を即日決定し、さらに、数日後にスイス最大の銀行であるUBSとの買収を公表しています。

3月末時点では、市場は全体としてまだ不安定感が残るものの、金融当局の対応も助けとなり、株式市場では買い戻しが続いています。債券市場では金利低下が大幅に進み、それに伴う日米金利差縮小の影響で、為替市場は米ドル安円高方向へ振れています。

昨年来の高インフレ対応の利上げが、個別金融機関に対してとはいえ悪影響を与え始めていることがみえ、今後の利上げ姿勢に影響がでてくるとの思惑が広がりました。インフレが直ぐに収まらないなかで、金融当局にとっては難しいかじ取りがこれから続くことになりそうです。

2023年3月の各金融市場の動向確認

株式市場

S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較グラフS&P500、Nasdaq、TOPIX指数の年初来パフォーマンス比較グラフ(2022年初~2023年3月末)

  • 米国株式S&P500指数は月間プラス3.5%、Nasdaq総合指数はプラス6.7%
    欧米金融機関の混乱から一時的に広がった金融システム不安に対し、金融当局の対応が早かったこともあり、株式市場は3月前半の下落から反転し月間プラス圏に浮上。特に金利低下が進んだこともあり、昨年終盤に売り込まれていたハイテク銘柄などへの買いが広がり、Nasdaq総合指数は月間6.7%と大きく上昇しました。

  • 日本株式は月間プラス0.5%
    3月前半の下げがきつかった日本株式は、為替市場の円高進展などもあって戻りがやや鈍く、小幅高で終えました。

債券市場

日米10年国債金利の2022年初来の推移グラフ(2023年3月末時点)

日米10年国債金利の過去1年の推移比較グラフ(2023年3月末時点)

  • 米国10年国債金利は月間で0.47%低下し、3.4%台に
    金融システム不安が広がり、今後の利上げが難しくなるとの思惑もでてききたことで、2月に大きく上昇した米国長期金利は大幅に低下。米国10年国債金利は、前月比0.47%低い3.47%で終えています。

  • 日本10年国債金利も月間で0.17%低下し、0.33%
    欧米で金利低下すすむなかで、年初から日銀の許容変動幅の上限である0.5%程度に貼りついていた日本10年国債金利も、0.33%まで低下しました。

為替市場

米ドル円為替レートと米10年国債金利の2022年初来推移グラフ(2023年3月末時点)

米ドル円為替レートと米10年国債金利の過去1年の推移グラフ(2023年3月末時点)

  • 米ドル円は3.4円の円高となる132円台
    米国の金利が大幅に低下し日米金利差が縮小したことから、為替市場では米ドル高円安が進みました。一時138円近辺まで戻していた米ドル円為替レートは、132円台となりました。

商品市場

WTI原油先物価格と金先物価格の2022年初来の推移グラフ(2022年初~2023年3月末)

WTI原油先物と金先物の過去1年の推移グラフ(2022年初~2023年3月末)

  • 原油価格は月間マイナス1.8%、金価格はプラス7.2%
    金融システム不安が広がったことで、有事の金の思惑もあり、金価格は急騰しました。

続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。

グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年3月末時点)

株式市場
指数2023年
3月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
S&P 5004,109.313.5%7.0%
Nasdaq12,221.916.7%16.8%
東証TOPIX2,003.500.5%5.9%
ドイツ DAX15,628.841.7%12.2%
英国 FTSE1007,631.74-3.1%2.4%
香港ハンセン20,400.113.1%3.1%
上海株価指数3,272.86-0.2%5.9%
Dow Jones33,274.141.9%0.4%
日経平均株価28,041.482.2%7.5%
東証REIT指数1,785.77-3.1%-5.7%

為替・金利市場
指標2023年
3月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
米ドル円 為替レート132.79-3.41円1.68円
ユーロ円 為替レート143.93-0.12円3.62円
英ポンド円為替レート163.770.06円5.17円
豪ドル円 為替レート88.77-3.01円-0.56円
ドルインデックス102.19-2.64-1.08
米国10年国債金利3.47%-0.47%-0.41%
日本10年国債金利0.33%-0.17%-0.09%

商品先物市場
商品先物2023年
3月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
WTI原油 (ドル/バレル)75.67-1.8%-6.0%
(ドル/トロイオンス)1,969.007.2%7.8%
(ドル/トン)8,9930.4%7.4%

最後に、主な資産クラス毎のパフォーマンス動向を確認しておきたいと思います。

主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年3月)

これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。

以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年3月のパフォーマンスを表示しています。

主要な資産クラスの2023年3月実績
主要な資産クラスの月間パフォーマンス(2023年3月)
※新興国債券クラスのみ、eMAXIS Slimeシリーズは存在しないため、eMAXIS新興国債券インデックスを用いています。対象として用いたemaxisシリーズについては、過去の記事をご参照ください。(参照記事:投資の考え方3-ポートフォリオ運用の資産クラス

続いて、各資産クラスの2022年初から過去約1年間の動向を見てみます。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2022年1月~2023年3月)

2023年初からの2か月間の動きをクローズアップします。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2023年初~2023年3月)
各資産クラスともに、3月後半にかけて大きく戻しています。ただその中でも月前半に下げのきつかった先進国REIT、日本REITクラスは月間で大きなマイナスとなりました。また、円ベースでの認識となることから、円高進展の影響を受ける、先進国株式や新興国株式クラスは月間マイナスとなっています。

なお、長期分散投資ポートフォリオの2023年3月の年間運用実績についてはこちらの記事をご覧ください。

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

投資スタンスについてはこちらをご覧ください。

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