2023年1月の金融市場を振り返る-グローバル投資市場と主な資産クラスの動向確認

2023/02/01

投資-市場動向

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2023年1月の市場動向を振り返る

主要国の株式市場は、各国中央銀行によるインフレ対応の利上げ継続などを受け、2022年12月には4~8%程の下落をみせました。しかし、2023年に入ると一転、1月の株式市場は12月の下落分を取り戻すような上昇となりました。

米国では、個人消費支出の伸びが鈍化するなどインフレ減速を示す経済指標の発表が続き、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止が早まるとの観測が高まりました。インフレのピークアウト感が広がりFRBの政策に対する不透明感が払しょくされるにつれ、株式市場は楽観に傾き反転上昇しています。景気後退入り、さらにはハードランディングの可能性も意識されているなかで、現時点では、実態経済の悪化については目をつむっている格好です。

日本においては、1月17~18日の日銀金融政策決定会合で金融政策の追加修正が行われるとの思惑が広がりました。市場にとっては予想外となった日銀による12月の金融政策の変更を受け、警戒感が高まっていました。さらに為替市場で大幅に円高が進んだこともあり、1月半ばまで日本株式市場は調整色を強めていました。1月の日銀金融政策決定会合で金融政策の現状維持が決定されると安心感が広がり、日本株式市場は大きく上昇しました。

為替市場では、2022年9月以降の円高トレンドが継続しています。米国のインフレが落ち着き米金利の低下が進んでいること、日銀による金融政策の追加修正が意識されていることによって、日米金利差がさらに縮小していくだろうとの観測が背景にあります。

2023年1月の各金融市場の動向確認

株式市場

S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較グラフ

S&P500、Nasdaq、TOPIX指数の年初来パフォーマンス比較グラフ(2022年初~2023年1月末)

  • 米国株式S&P500指数は月間プラス6%、Nasdaq総合指数はプラス10%
    インフレの減速感が広がるにつれ、利上げ停止が早まるとの観測が広がり、2023年1月に入り米国株式市場は一転、大幅に上昇しました。長期金利の大幅低下を受け、ハイテクセクタ―の多いNasdaq総合指数がプラス10.7%と大幅に上昇しました。S&P500指数も月間プラス6.2%と、12月の下落分を取り戻しています。

  • 日本株式は月間プラス4.4%
    2022年を通して相対的に下落幅の小さかった日本株式も、1月の金融政策決定会合で金融政策の追加修正を行わないことが決定されると反転上昇。月間でプラス4.4%となりました。

債券市場

日米10年国債金利の過去1年の推移グラフ(2023年1月末時点)

日米10年国債金利の過去1年の推移比較グラフ(2023年1月末時点)

  • 米10年国債金利は月間で0.37%と大きく低下
    インフレの減速感が広がり、米連邦準備理事会(FRB)によ利上げ停止が早まるとの見通しが強まって、米国長期金利は急低下しました。2022年末に3.9%近くあった米10年国債金利は一時3.4%を割り込み、前月比0.37%低い3.5%近くで終えています。

  • 1月の金融政策決定会合で日銀は動かず
    市場にとっては予想外となった日銀による12月の金融政策の変更を受け、1月17~18日の日銀金融政策決定会合での日銀の動きが警戒、注目されていました。(12月の動きについては、こちらの記事をご覧ください)1月も金融政策の追加修正が行われるとの思惑が広がっていましたが、1月の会合では現状維持が決まりました。日銀の黒田総裁の任期が3月までなので、現在の緩和政策の本格的な変更は新総裁に任せることとし、それまでの間はこのままの緩和政策で進めるのが現時点の方針なのかも知れません。

    1月に入り、一時0.5%を上回る水準まで上昇していた日本10年国債金利は、金融政策の現状維持が決まると0.4%を下回る水準まで一旦低下しました。しかし、その後は0.4%後半まで上昇し、今後の動向を睨んだ神経質な動きとなっています。

為替市場

米ドル円為替レートと米10年国債金利の過去1年推移グラフ(2023年1月末時点)

米ドル円為替レートと米10年国債金利の過去1年の推移グラフ(2023年1月末時点)

  • 米ドルが各国通貨に対し売られ、米ドル円は127円台を一時つける
    米国長期金利の低下を受け、米ドルが各国通貨に対して弱含んでいます。2022年末に131円台であった米ドル円為替レートは、2022年5月以来となる127円台まで一時売られました。少し戻して130円台で終えていますが、昨年11月以降の明確な円高トレンドを形成しています。


  • ユーロも買われ、ユール米ドルは一時1.09台
    2022年に大きく売られ、10月には1ユーロ=1米ドルを一時割り込んだユーロも対米ドルでの上昇を続けています。ウクライナ情勢を受けて一時とんでもない水準まで上昇していた天然ガス価格等が、歴史的暖冬により従来水準まで低下しました。欧州の消費が下支えされ、欧州景気の大幅失速が防がれています。ユーロ米ドル相場は1月に入り、1ユーロ=1.09米ドル台まで一時回復しました。

商品市場

WTI原油先物価格と金先物価格の過去1年の推移グラフ(2022年初~2023年1月末)

WTI原油先物と金先物の過去1年の推移グラフ(2022年初~2023年1月末)

  • 原油価格は揉み合い、金価格は2022年4月来の水準まで買われる
    中国で新型コロナウィルス感染症患者が急増し、原油需要が減退するとの思惑が広がりました。2023年1月初めにWTI原油先物価格は1バレル81ドル台から72ドルに急落しています。その中国経済が再開し、さらに歴史的暖冬によって欧州景気が下支えされることでの需要増が見込まれると、再び82ドル台まで買われました。

    金価格は米ドル安や米ドル金利の低下により上昇が支えられています。さらに、ウクライナにおける地政学リスクの高まりや、ロシアや中国などが外貨準備の一部を米ドルから金へシフトさせる動きなども重なり、2022年4月の高値水準まで買われています。

続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。

グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年1月末時点)

株式市場
指数2023年
1月末
変化
(月間)
2022
年初来
S&P 5004,076.606.2%-14.5%
Nasdaq11,584.5510.7%-26.0%
東証TOPIX1,975.274.4%-0.9%
ドイツ DAX15,128.278.7%-4.8%
英国 FTSE1007,771.704.3%5.2%
香港ハンセン21,842.3310.4%-6.6%
上海株価指数3,255.675.4%-10.6%
Dow Jones34,086.892.8%-6.2%
日経平均株価27,327.114.7%-5.1%
東証REIT指数1,826.84-3.5%-11.6%

為替・金利市場
指標2023年
1月末
変化
(月間)
2022
年初来
米ドル円 為替レート130.12-0.99円15.04円
ユーロ円 為替レート141.321.01円10.5円
英ポンド円為替レート160.151.55円4.46円
豪ドル円 為替レート91.742.41円8.19円
ドルインデックス101.92-1.356.32
米国10年国債金利3.51%-0.37%2.00%
日本10年国債金利0.49%0.07%0.42%

商品先物市場
商品先物2023年
1月末
変化
(月間)
2022
年初来
WTI原油 (ドル/バレル)79.15-1.6%5.2%
(ドル/トロイオンス)1,929.505.2%5.5%
(ドル/トン)9,22310.2%-5.1%

最後に、主な資産クラス毎のパフォーマンス動向を確認しておきたいと思います。

主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年1月)

これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。

以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年1月のパフォーマンスを表示しています。

主要な資産クラスの2023年1月実績
主要な資産クラスの月間パフォーマンス(2023年1月)
※新興国債券クラスのみ、eMAXIS Slimeシリーズは存在しないため、eMAXIS新興国債券インデックスを用いています。対象として用いたemaxisシリーズについては、過去の記事をご参照ください。(参照記事:投資の考え方3-ポートフォリオ運用の資産クラス

続いて、各資産クラスの2021年初から過去1年間の動向を見てみます。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2022年1月~2023年1月)

2022年12月初からの2か月間の動きをクローズアップします。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2022年12月~2023年1月までの2か月間)

2022年12月に大きく下落した株式やREITクラスは、日本REITクラス以外、急回復をみせています。特に新興国株式や先進国REITクラスは11月末を上回る水準まで買われました。

なお、長期分散投資ポートフォリオの2023年1月の年間運用実績についてはこちらの記事をご覧ください。

<ご注意>当サイトに記載の内容は、あくまで、管理人の個人的な見解に基づくもので、何ら特定の投資運用方針を推奨するものではありません。記載内容については、細心の注意を払い各種の公表資料等から作成していおりますが、掲載内容の適時性、正確性、有用性等に関して一切保証するものではありません。投資にあたり、万が一損害を受けたとしても一切責任は負えません。投資はあくまで自己責任でお願いします。 

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

投資スタンスについてはこちらをご覧ください。

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