2022年の市場動向を振り返る
新型コロナウィルス感染症がグローバルに広がり始めてから2年が経ち、2022年は、その経済的な影響からの回復が期待されるなかで始まりました。ところが、そのような期待に反して予想外ともいえるイベントが数多く発生し、金融市場は歴史的にも大きな変動をみせた一年となりました。
2022年2月にはロシアがウクライナへ侵攻を開始しました。両国は、小麦などの農産物や、原油、天然ガスなどのエネルギー一次産品の世界的な供給元であることから、グローバルにインフレが加速しました。年後半には落ち着いてきたものの年前半には資源価格が軒並み高騰、各国では年間を通じて物価上昇が進みました。
インフレへの対応から、世界各国の中央銀行は利上げを進めました。特に米連邦準備理事会(FRB)による利上げペースは激しいものでした。政策金利であるFF金利(Federal Funds Rate)の誘導目標は、2022年初に 0~0.25%レンジでしたが、12月には 4.25%~4.50%まで急上昇しています。
このような金融政策を受け、米国長期金利は歴史的といえる大幅上昇となりました。米金利の上昇は米国への資金の流れからを加速させ、米ドル高が進みました。米ドル円為替レートは1ドル151円台と32年ぶりの水準まで円安が進み、ユーロも20年ぶりの安値をつけました。
インフレの加速、各国の利上げに伴う金利上昇、さらに、米中対立や新型コロナウィルス感染拡大による供給網リスクの顕在化、また、特に欧州ではロシアのウクライナ侵攻に伴う経済的影響を直接的に受け、グローバルに株式市場は下落しました。
各国で利上げが進む中で沈黙を守っていた日銀も、12月になって漸くこれまでの大規模緩和を修正する方針を決めました。長期金利の変動許容幅をこれまでの0.25%から、0.5%に拡大することになり、実質的に、低利で抑えてきた長期金利の上昇を少し許容することになりました。これを受け、米ドル円為替レートは、一時の水準から大幅に円高方向に修正されています。
2022年の各金融市場の動向確認
株式市場
S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の過去1年のパフォーマンス比較グラフ
S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の過去3年のパフォーマンス比較グラフ
- 米国株式S&P500指数は年間マイナス19%、Nasdaq総合指数はマイナス33%
インフレの進展、大幅な金利上昇を受け、米国株式市場は大きく下落、2022年を通して調整が進みました。S&P500指数は、10月に前年末比マイナス26%に達する場面もあり、年間でマイナス19.4%で終えています。ハイテク企業の多いNasdaq総合指数は年間でマイナス33.1%となりました。
2022年の大きな下落幅は、2020年、2021年の大幅上昇の反動ともいえます。過去3年の推移グラフからもわかるように、米国株式市場は新型コロナ感染症まん延が始まって以降、2021年にかけてかなりの上昇をみせてました。2019年末対比の上昇幅は、S&P500指数で一時49%、Nasdaq総合指数では80%にも達しています。下落が続いた2022年末現在の水準でも、2019年末対比では、S&P500指数がプラス18%、Nasdaq総合指数がプラス16%となります。
- 日本株式は年間マイナス5.1%
2020年、2021年を通じた上昇が米国株式などと比べて控えめであった日本株式は、2022年中、相対的に底堅く推移しました。東証TOPIXは、最も下落した3月でも2021年末比でマイナス12%にとどまり、年間でマイナス5.1%となっています。
- 米10年国債金利は年間で2.4%もの大幅上昇
インフレへの対応姿勢を強めた米連邦準備理事会(FRB)による急激な利上げによって、米国長期金利も急上昇しました。2021年末に1.5%台であった米10年国債金利は、2022年10月には2007年以来となる4.3%台を一時つけ、3.88%で年末を迎えました。
- 日銀もついに12月に金融緩和政策を変更
インフレへ対応から各国の中央銀行が金融引き締め姿勢を強めるなかで、日本銀行はかたくなに沈黙を保っていました。2022年12月になり、ついに日銀はこれまでの緩和政策を修正し、長期金利の変動許容幅をこれまでの0.25%から、0.5%に拡大しました。
政策金利が既に最低水準にあり直接的な金融緩和措置がとれないなかで、日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)という長期金利を一定水準に保つ政策をとってきました。長期金利を実質的に低利に抑えることで、緩和的な効果を狙ったものになります。YCCの変動幅が拡大さることで、このところほぼ0.25%で推移してきた10年国債金利が0.50%まで許容されることなります。2022年末の10年国債金利は0.41%となっています。
- 米ドルの独歩高が進み、米ドルは2002年以来の水準をつける
米国長期金利の大幅上昇を受け、また、欧州地域はロシアによるウクライナ侵攻をより強く受けることなどから、2022年は米ドルの強さが目立ちました。米ドルは円のみでなく各国通貨に対して独歩高となり、複数の主要国通貨に対する米ドルの為替レート価値を表すドルインデックス(ドル指数)は2002年以来となる114ポイント台を9月につけました。
2022年前半に特に売られ続けたユーロも、2002年以来となるパリティ水準、すなわち1ユーロ=1米ドルを一時割り込みました。11月以降、パリティ水準を回復し、年末は1ユーロ=1.07米ドル程となっています。
- 米ドル円は一時152円に迫り、131円台で終える
米国長期金利の大幅上昇、さらには、資源価格上昇などによって日本の貿易赤字が膨らみ続けていることを背景に、2022年は大幅に円安が進みました。2021年末に115円程であった米ドル円為替レートは、10月には一時152円に迫る場面がありました。
11月以降、米国長期金利がピークを付けてやや下落したこと、さらに、日銀によるYCC政策の変更を受け、米ドル円為替レートは円高方向へ転じています。2022年末は、前年比16円の円安となる131円台で終えています。
商品市場
WTI原油先物価格と金先物価格の過去1年の推移グラフ(2022年末時点)
- 原油価格は3月に2008年以来の水準まで急騰するも、年末にむけて落ち着く
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧米によるロシアへの金融制裁が強化されました。有数の産油国であるロシアへ与える影響が懸念され、原油の供給懸念が高まり、原油価格は急騰しました。2022年3月にWTI原油先物価格は130ドル台と2008年の水準まで上昇。ただ、年後半になると、新型コロナウィルス感染症の急拡大による中国の経済停滞など経済活動のスローダウンが意識され、原油価格は下落が進みました。2022年末は、2021年末対比7%高の80ドル近辺で終えています。
新型コロナウィルス感染症の拡大による経済への不安感の高まりなどから、2020年以降、安全資産である金は買われてきました。ロシアの侵攻を契機に「有事の金」としての需要がそこに加わり、金価格も3月に急騰しました。原油価格同様、金価格も年後半にかけては下落し、2022年末は前年末とほぼ同水準で終えています。
続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。
グローバル投資市場の主要指数の確認(2022年末時点)
為替・金利市場
主な資産クラスのパフォーマンス状況(2022年)
これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。
以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2022年の年間パフォーマンスを表示しています。
なお、ここでのパフォーマンスは円ベースであること、すなわち、海外資産クラスについては円為替レートの影響を受けることに注意が必要です。2022年は海外の株式市場をはじめとして大きく調整していますが、急激な円安の進行から、円ベースで見た場合の下落率は相当に緩和されてます。
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