VIX指数「恐怖指数」とS&P500指数の動きを確認-FRBの利上げ早期化観測による混乱は峠を越したか

2022/02/02

投資-市場動向 投資の考え方

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2022年に入り、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが早まるとの懸念が広がり、株式市場が大きく下落しました。2022年1月、米国Nasdaq指数は一時、前年末比15%超まで下落、東証TOPIXも9%に迫る下げを記録しました。

この混乱時、「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数も急上昇をみせています。この記事では、VIX指数について確認し、米国S&P500指数とVIX指数のこれまでの動きを振り返ってみたいと思います。

VIX指数「恐怖指数」とは

VIX指数は、Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)のことで、先行き株価がどれくらい変動すると市場参加者が見込んでいるか市場が見込むその変動性(ボラティリティ)を表している指数です。

VIX指数は米国の取引所(シカゴ・ボード・オプション取引所 CBOE)で取引されていて、株式市場の変動性(ボラティリティ)に対する期待値を数値化しているといえます。S&P500指数の変動率見込みを内包した株価指数オプションという金融商品の取引価格を用い、市場参加者の見込んでいる変動性(ボラティリティ)を観測しているのです。

株式市場の先行きの値動きが激しくなる、すなわち変動性が高くなる、と多くの市場参加者の見込んでいる場合、VIX指数は高くなります。逆に、市場の値動きが小さくなり膠着するとみている参加者が多くなると、VIX指数は低くなります。

VIX指数が高い状況は、株式市場が荒れていて暫くはリスクが大きい状態だ、と参加者が感じている環境だと言うこともできます。(市場リスクについてはこちらの記事もご参照ください。)

S&P500指数とVIX指数の動向

過去5年間のS&P500指数とVIX指数の動きをグラフで見てみます。上のグラフがS&P500指数の週次ローソク足、下のグラフがVIX指数の週足です。

S&P500指数とVIX指数の推移グラフ(直近5年)
S&P500指数とVIX指数の推移グラフ(2017年2月~2022年2月)
下側のグラフで青丸で囲んだ部分は、VIX指数が急上昇して35を上回ったタイミングを示しています。赤丸は2022年1月の急落局面です。こうしたタイミングでは、いずれもS&P500指数がある程度大きな調整をみせています。

VIX指数が上昇し株式市場が大きな調整下にある時期は、市場参加者の不安感が広がっている状況だともいえます。リスクの大きい不安定な状態が続きそうだとの感覚が蔓延し、VIX指数を押し上げているのです。

その後VIX指数が低下し、もとの水準付近に戻ってくると、S&P500指数も落ち着いた上昇トレンドに回帰しているとこがみてとれます。

S&P500指数が落ち着いた上昇トレンド、あるいは横ばい圏にあるような時期においては、VIX指数は概ね10から20までの間の推移です。

新型コロナウィルス感染症の影響が広がる2020年以前、こうした平常時のVIX指数は10台前半で推移していました。

2020年以降をみると、株式市場が上昇トレンドにあるような期間でも、VIX指数は20を大きくは下回りません。大規模な金融緩和を受け高値圏まで上昇したS&P500指数に対し、平常時でも市場参加は従前と比べ大きなリスクを感じていたのかもしれません。

2021年以降の直近の日足推移が下記グラフです。

S&P500指数とVIX指数の推移グラフ(直近1年)
S&P500指数とVIX指数の推移グラフ(2021年1月~2022年2月)
今回の調整局面で、VIX指数は1月24日に38まで上昇、2月に入って20台前半まで落ちてきました。VIX指数の動きから、株式市場はそろそろ落ち着きを取り戻しつつあるとみることもできます。

ただ、VIX指数はまだ平常時水準に戻ったわけではなく、株式市場がこのまま直ぐに安定化してくるとは限りません。前回2021年12月の調整局面においても、VIX指数は落ち着きどころまではなかなか低下せずに、市場の不安定な動きは継続しました。

今後の市場の方向性は誰にも分からないものの、市場参加のリスク心理を把握する一助となるのがVIX指数だといえます。

リーマンショック時期のS&P500指数とVIX指数

参考までに、2009年のリーマンショック時のS&P500指数とVIX指数の推移をみてみます。下記は、リーマンショック前の上昇トレンドにあった2006年から2011年までの週足グラフです。

S&P500指数とVIX指数の推移グラフ(2006年~2011年)
S&P500指数とVIX指数の推移グラフ(2016年~2011年)
VIX指数の推移をみると、S&P500指数が順調な上昇トレンドにあった2006年は概ね10台前半で低位安定しています。株価が高値圏でやや不安定化してきた2007年から2008年は、下がっても20程度、時々30台へ上昇(上グラフ赤囲み)と水準を一段切り上げています。

そして2008年10月のリーマンショック時にVIX指数は89まで急騰しました。それから半年ほどは少し低下しても50をなかなか下回らないような状態でした。(上グラフ緑囲み)S&P500指数も2008年10月の急落以降なかなか安定化せず、2009年春に急落してから漸くボトムをつました。

このように、VIX指数が急上昇し株式市場が急落後、VIX指数が相応に低下してきたとしても、それが必ずしも直ぐに市場の落ち着きを示唆するとは限らないことは頭に入れて置く必要があります。

VIX指数をトレードに生かす

これまでみてきたように、VIX指数は市場参加者が株式市場の変動性をどの程度見込んでいるかという、市場のリスク心理を表しているといえます。そこで、VIX指数は、S&P500指数のトップ圏とボトム圏について、何等かのヒントを与えてくれる場合があるのです。

VIX指数が急騰を見せ、S&P500指数が急落後、VIX指数が下がりだすと、株式指数はボトムアウトしてくるようなタイミングとみてとれる場合があります。

逆に、S&P500指数が上昇後の揉み合い圏にあり、VIX指数が低位ながらも従前よりもやや高い水準推移となってきた際には、株式指数はトップ圏にあり、次第に下落に転じると捉えられる場合があります。

当然ですが、株価指数の水準感については、他の株価指標等と組み合わせての総合的判断となることは言うまでもありません。ただ、上のように何らかのヒントを与えてくれる場合もあるのです。

特に、長期投資家の場合には、長期的目線で株式市場の動向を掴むのに、VIX指数が役立つと思っています。長期目線であれば、ピンポイントでトップやボトムを掴む必要はありません。今後まだ下落の可能性はあるもののそろそろボトム圏に近付いたろうから購入エントリーしよう、などとの判断に使える訳です。

ハッピー・リタイア・ライフへ向けた我が長期分散投資ポートフォリオにおいても、2022年1月の米国株式、日本株式の購入にあたっては、VIX指数を大いに参考にしていました。

昨年ポジションを落とした分の今回の購入にあたっては、米国株価指数の動きをとらえるために、VIX指数を利用しました。VIX指数が一旦35を上回り、下落に転じてきたタイミングで、米国株式、日本株式、日本REITクラスの購入をすすめました。
(2022年1月の購入実績についてはこちらの記事をご参照ください)

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

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