2023年7月の市場動向を振り返る
2023年7月の金融市場は、月末近くに米連邦公開市場委員会(FOMC)、欧州中央銀行(ECB)理事会、そして日銀金融政策決定会合を控え、各国の今後の金融政策を見極めようとしながらの売買が続きました。そうしたなか、米国株式市場はインフレの減速と好調な企業決算を受け、堅調な動きとなりました。日本株式市場は、月前半の大幅下落を後半に取り戻すような展開でした。
米国では、7月7日に発表された6月の米国雇用統計で非農業部門就業者数の増加が市場予想を下回り、雇用の減速が確認されました。平均時給の伸びは引き続き高く、失業率も歴史的な低水準にあるものの、就業者数の伸びが市場予想を下回ったことで、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの見込みが弱まりました。
さらに、7月12日に発表された米国の6月の消費者物価指数(CPI)が市場の事前予想を下回る結果となり、インフレ鎮静化の流れが見えてきました。FRBによる年内2回の追加利上げというこれまでの見方が急速に後退し、利上げは7月を最後に打ち止めとなるとの観測が市場でひろがりました。結局、FRBは25-26日のFOMCで市場予想通りの0.25%の利上げ再開を決定し、さらに今後の利上げ等政策は何も決まっていないとしました。
米国経済が本格的なリセッションに陥るとの見方はほとんどなくなり、景気後退を回避する軟着陸(ソフトランディング)シナリオが強まりました。株式市場は月半ば以降、上昇に弾みがつき、ダウ平均株価は13営業日連続で上昇、36年ぶりの連騰記録をつけるに至っています。
日本においては初旬に、日本銀行が7月下旬の会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)を修正するとの観測が広がりました。月半ばになると、日本銀行の植田総裁がG20の記者会見において、「金融緩和の続ける姿勢は変わらない」と発言、早期のYCC政策修正期待は一旦後退しました。
ところが28日の日銀金融政策決定会合において、日本銀行はYCCの運営柔軟化を決定しました。10年国債利回りの変動幅を±0.5%程度を目途とするとし、実質的に1.0%までの利回り上昇が容認されることになりました。実際に、10年国債利回りは会合後に上昇し、9年ぶりとなる0.6%を月末につけています。
初旬にYCC政策修正観測が広がるなかで、米ドル円為替レートは、それまでの145円近くから137円台まで下落し(ドル安円高が進み)ました。それにあわせて日本株式市場も下落、日経平均株価は3万3,000円台から3万1,700円台まで下がりました。
YCC政策修正発表後の月末にかけては、為替市場、日本株式市場ともに反転上昇し、米ドル円為替レートは142円台、日経平均株価も3万3,000円台を回復して終えました。
2023年7月の各金融市場の動向確認
株式市場
S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較
- 米国株式S&P500指数は月間でプラス3.1%、Nasdaq総合指数はプラス4.0%
米国でインフレ鎮静化の流れが見えてくるにつれ、米国経済が景気後退を回避して軟着陸する(ソフトランディング)シナリオが広がりました。好調な企業業績を背景とした株式市場の上昇は続き、S&P500指数は2022年3月ごろの水準まで戻してきました。
- 日本株式は月間プラス1.5%、初旬に売られた後に戻す
米国のインフレ鎮静化や日本銀行によるYCC修正観測などを受けて、7月初旬には米ドル安円高が進行し、日本株式市場も売られました。その後は、黒田総裁による金融緩和政策維持するとの発言などの安心感も広がり反転上昇、月末近くのYCC政策修正公表後には一段と上昇し、前月末の水準を回復しました。
東証株価指数(TOPIX指数)は前月末比プラス1.5%、日経平均株価はほぼ前月末水準で終えました。
- 米国10年国債利回りは、前月比0.13%高い3.97%
米国経済のソフトランディングシナリオが広がった月後半にかけて、米国株式市場の上昇と歩調を合わせて、米長期金利も上昇しました。日銀によるYCC政策修正後には、日本の長期金利上昇により、これまで米国債券へ投資をしていた機関投資家の資金の一部が日本国債投資へシフトするとの思惑も働きました。米国債券の売却が今後進むとの連想から、米長期金利の上昇の一因となっています。
- 日本10年国債利回りは、9年ぶりの0.59%
日本銀行が7月下旬の会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)を修正するとの観測が月初めにひろがり、日本10年国債利回りは0.45%近辺まで上昇しました。月半ばの日銀植田総裁の発言により若干低下する場面もありましたが、28日のYCCの運営柔軟化を決定を受け、日本10年国債利回りは9年ぶりとなる0.6%を月末につけました。
- 米ドル円は2円の円高の142円台
米国の6月の雇用統計やCPIなどの経済指標によりインフレ鎮静化の流れが見えてくるにつれ、7月前半は円高ドル安が進みました。米ドル円為替レートは6月末の144円台から一時137円台まで下落しました。その後もみ合う動きとなりましたが、日銀によるYCCの運用柔軟化の決定を受けて上昇、結局142円台まで戻して7月を終えました。YCC柔軟化によって名目の長期金利は若干上昇しましたが、市場の期待インフレ率が上昇している中で、実質金利(=名目の長期金利-期待インフレ率)はむしろ低下傾向にあることが円安ドル高の背景と考えられます。
商品市場
WTI原油先物価格と金先物価格の2022年初来の推移グラフ(2022年初~2023年7月末)
- 原油価格は月間プラス15%、金価格はプラス3.8%
FRBによる利上げ打ち止め感と、景気のソフトランディング期待から原油価格は上昇しました。自主減産を続けるサウジアラビアが減産期間を延長するとの観測も、原油価格上昇のサポートとなっています。WTI原油先物価格は月間でプラス15.6%となり、今年4月以来の1バレル80ドル台を回復しました。金価格は月間プラス3.8%、同価格はプラス6.2%といずれも上昇しています。
続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。
グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年7月末時点)
為替・金利市場
主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年7月)
これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。
以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年7月のパフォーマンスを表示しています。
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