2023年6月の金融市場を振り返る-グローバル投資市場と主な資産クラスの動向確認

2023/07/01

投資-市場動向

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2023年6月の市場動向を振り返る

米国では経済指標が経済の底堅さを示し、市場に広がっていた年内利下げ観測が弱まりました。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレ目標達成は長い道のりで、現状では年内2回の追加利上げが適切になるとの見解を示しました。

市場では追加利上げが行われても深刻な景気悪化は避けられるとの見方が広がり、出遅れていた景気敏感株などにも物色が広がりました。6月後半に入ると、追加利上げにより景気後退に陥る可能性が意識され株価が下落に転じる場面もみられましたが、下値では買いが優勢で月末にかけて上昇、高値引けとなりました。

FRBによる年内追加利上げの必要性が示されたこともあり、米国長期金利は上昇。米10年国債金利は3月以来となる3.7~3.8%台水準での推移が続いています。米国長期金利の上昇が進む一方で、日銀が金融政策の現状維持を決めた日本の長期金利はむしろやや低下傾向にあります。

米国と日本の金利差拡大が意識され、米ドル高が急速に進んでいます。米ドル円為替レートは2022年11月以来の145円台をつけました。インフレ継続により金融引締めの長期化観測が高まる欧州通貨も買われ、ユーロは対米ドルで1.10を一時回復し、ユーロ円為替レートは15年ぶりとなる157円までユーロ高円安が進んでいます。英ポンドも2015年以来の高値となる183円まで上昇しました。

日本株式市場では、4月以降の海外投資家を中心とした見直し買いが続いています。日経平均株価、東証株価指数(TOPIX指数)ともに33年ぶりとなるバブル崩壊後高値をつけています。一時広がった衆議院解散総選挙の報道を受けた経済対策期待や、日銀の金融緩和政策維持も後押しとなりました。米ドル高円安の進行によって米ドル建て日経平均株価が安く見えることも、海外投資家からの資金流入につながっていると考えられます。

2023年6月の各金融市場の動向確認

株式市場

S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較S&P500、Nasdaq、TOPIX指数のパフォーマンス比較グラフ(2022年初~2023年6月末)

  • 米国株式S&P500指数は月間でプラス6.5%、Nasdaq総合指数はプラス6.6%
    米政府の債務上限問題が無くなり、労働市場をはじめとした経済指標が米国経済の底堅さを示すにつれ、米国株式市場は上昇が加速しました。これまで買われてきたハイテク銘柄に加え、景気敏感株などにも物色が広がっています。6月後半に入るとFRBの追加利上姿勢を嫌い弱含む場面もみられましたが、下値では買いが優勢で月末にかけて上昇、高値圏で終えています。

  • 日本株式は月間プラス7.4%、33年ぶりのバブル後高値をつける
    米ドル高円安の進行、一時広がった衆議院解散総選挙の報道を受けた経済対策期待や、日銀の金融緩和政策維持による安心感もあり、日本株式市場では、4月以降の海外投資家を中心とした見直し買いが継続しました。
    日経平均株価は33,800円台、東証株価指数(TOPIX指数)は2,300ポイント台と33年ぶりの平成バブル後高値を更新しています。

債券市場

日米10年国債金利の2022年初来の推移グラフ(2023年6月末時点)日米10年国債金利の2022年初来の推移比較グラフ(2022年初~2023年6月末)

  • 米国10年国債金利は、前月比0.2%高い3.84%
    経済指標が景気の底堅さを示す中、FRBのパウエル議長が年内2回の追加利上げの必要性を訴えたこともあり、米長期金利は上昇しました、米10年国債金利は3月以来となる3.7~3.8%台水準での推移が続いています。

  • 日本10年国債金利は 小幅低下の0.40%
    6月15~16日の日本銀行の金融政策決定会合が注目され、植田新日銀総裁が物価見通しを上方修正し、長期金利を一定水準に保つイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を一部修正するのではないかとの思惑も一部にはありました。しかし、会合では金融政策の現状維持が決定され、日本の10年国債金利はやや低下、為替市場では円安が進行しました。

為替市場

米ドル円為替レートと米10年国債金利の過去1年の推移グラフ(2023年6月末時点)米ドル円為替レートと米10年国債金利の過去1年の推移グラフ(2023年6月末時点)

  • 米ドル円は5円の円安の144円台
    日本銀行が6月の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める一方、米国ではFRBのパウエル議長が年内追加利上げの必要性を示したことから、日米長期金利差が拡大、為替市場では大幅に円安が進みました。米ドル円為替レートは2022年11月以来の145円台を一時つけています。インフレ継続により金融引締めの長期化観測が高まる欧州通貨も買われ、ユーロ円為替レートは15年ぶりとなる157円までユーロ高円安が進み、英ポンドも2015年以来の高値となる183円まで上昇しました

商品市場

WTI原油先物価格と金先物価格の2022年初来の推移グラフ(2022年初~2023年6月末)WTI原油先物価格と金先物価格の推移グラフ(2022年初~2023年6月末)

  • 原油価格は月間プラス3.7%、金価格はマイナス2.7%
    原油価格は5月以降、WTI原油価格で67ドルから73ドルの狭い範囲でのもみ合い展開が続いています。一方、金価格は5月はじめに高値をつけてからは、下落トレンドに入っているような推移です。

続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。

グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年6月末時点)

株式市場
指数2023年
6月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
S&P 5004,450.386.50%15.90%
Nasdaq13,787.926.60%31.70%
東証TOPIX2,288.607.40%21.00%
ドイツ DAX16,147.903.10%16.00%
英国 FTSE1007,531.531.10%1.10%
香港ハンセン18,916.433.70%-4.40%
上海株価指数3,202.06-0.10%3.70%
Dow Jones34,405.994.50%3.80%
日経平均株価33,189.047.50%27.20%
東証REIT指数1,862.30-1.00%-1.70%

為替・金利市場
指標2023年
6月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
米ドル円 為替レート144.324.98円13.21円
ユーロ円 為替レート157.458.52円17.14円
英ポンド円為替レート183.3410.04円24.74円
豪ドル円 為替レート96.205.63円6.87円
ドルインデックス102.26-1.98-1.01
米国10年国債金利3.84%0.20%-0.04%
日本10年国債金利0.40%-0.03%-0.02%

商品先物市場
商品先物2023年
6月末
変化
(月間)
変化
(年初来)
WTI原油 (ドル/バレル)70.643.70%-12.20%
(ドル/トロイオンス)1,929.40-2.70%5.70%
(ドル/トン)8,3162.40%-0.70%

最後に、主な資産クラス毎のパフォーマンス動向を確認しておきたいと思います。

主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年6月)

これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。

以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年6月のパフォーマンスを表示しています。

主要な資産クラスの2023年6月実績
主要な資産クラスの月間パフォーマンス(2023年6月)
※新興国債券クラスのみ、eMAXIS Slimeシリーズは存在しないため、eMAXIS新興国債券インデックスを用いています。対象として用いたemaxisシリーズについては、過去の記事をご参照ください。(参照記事:投資の考え方3-ポートフォリオ運用の資産クラス

続いて、各資産クラスの2022年初から過去約1年半の動向を見てみます。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2022年1月~2023年6月)

2023年初からの動きをクローズアップします。
主要な資産クラスのパフォーマンス推移グラフ(2023年初~2023年6月)
円ベースでのパフォーマンス認識であることから、大幅な円安進行により海外資産クラスが軒並み好調です。そうした中で、日本株式クラスの好調さが目立っています。円安は輸出企業を中心に企業業績には好影響を与えますが、資産価格自体には直接的なプラス効果はありません。にもかかわらず、日本株式クラスの年初来パフォーマンスは25%に届くまでにきてきます。

これまで同クラスの資産配分を落としていた海外投資家の見直し買いが入っている様子で、今後、日本の投資家に物色の流れがどの程度広がるのかが注目されます。

なお、長期分散投資ポートフォリオの2023年6月の運用実績についてはこちらの記事をご覧ください。

<ご注意>当サイトに記載の内容は、あくまで、管理人の個人的な見解に基づくもので、何ら特定の投資運用方針を推奨するものではありません。記載内容については、細心の注意を払い各種の公表資料等から作成していおりますが、掲載内容の適時性、正確性、有用性等に関して一切保証するものではありません。投資にあたり、万が一損害を受けたとしても一切責任は負えません。投資はあくまで自己責任でお願いします。 

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自己紹介

週に1~2日の働く、セミリタイア状態の50代男性です。

これまで国内外の株式、債券、ETF、投資信託、先物、FX、不動産など投資歴25年。2000年ITバブルで資産半減、その後2008年リーマンショックの大打撃も経験しました。

20代、30代のころにがむしゃらに働き、地道に資産運用を続けてきたおかげで、資産形成はある程度進みました。

今後の充実した完全リタイアライフに向け、長期目線で分散ポートフォリオ運用を継続中です。

投資スタンスについてはこちらをご覧ください。

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