2023年6月の市場動向を振り返る
米国では経済指標が経済の底堅さを示し、市場に広がっていた年内利下げ観測が弱まりました。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレ目標達成は長い道のりで、現状では年内2回の追加利上げが適切になるとの見解を示しました。
市場では追加利上げが行われても深刻な景気悪化は避けられるとの見方が広がり、出遅れていた景気敏感株などにも物色が広がりました。6月後半に入ると、追加利上げにより景気後退に陥る可能性が意識され株価が下落に転じる場面もみられましたが、下値では買いが優勢で月末にかけて上昇、高値引けとなりました。
FRBによる年内追加利上げの必要性が示されたこともあり、米国長期金利は上昇。米10年国債金利は3月以来となる3.7~3.8%台水準での推移が続いています。米国長期金利の上昇が進む一方で、日銀が金融政策の現状維持を決めた日本の長期金利はむしろやや低下傾向にあります。
米国と日本の金利差拡大が意識され、米ドル高が急速に進んでいます。米ドル円為替レートは2022年11月以来の145円台をつけました。インフレ継続により金融引締めの長期化観測が高まる欧州通貨も買われ、ユーロは対米ドルで1.10を一時回復し、ユーロ円為替レートは15年ぶりとなる157円までユーロ高円安が進んでいます。英ポンドも2015年以来の高値となる183円まで上昇しました。
日本株式市場では、4月以降の海外投資家を中心とした見直し買いが続いています。日経平均株価、東証株価指数(TOPIX指数)ともに33年ぶりとなるバブル崩壊後高値をつけています。一時広がった衆議院解散総選挙の報道を受けた経済対策期待や、日銀の金融緩和政策維持も後押しとなりました。米ドル高円安の進行によって米ドル建て日経平均株価が安く見えることも、海外投資家からの資金流入につながっていると考えられます。
2023年6月の各金融市場の動向確認
株式市場
S&P500指数、Nasdaq総合指数、東証TOPIX指数の2022年初来パフォーマンス比較
- 米国株式S&P500指数は月間でプラス6.5%、Nasdaq総合指数はプラス6.6%
米政府の債務上限問題が無くなり、労働市場をはじめとした経済指標が米国経済の底堅さを示すにつれ、米国株式市場は上昇が加速しました。これまで買われてきたハイテク銘柄に加え、景気敏感株などにも物色が広がっています。6月後半に入るとFRBの追加利上姿勢を嫌い弱含む場面もみられましたが、下値では買いが優勢で月末にかけて上昇、高値圏で終えています。
- 日本株式は月間プラス7.4%、33年ぶりのバブル後高値をつける
米ドル高円安の進行、一時広がった衆議院解散総選挙の報道を受けた経済対策期待や、日銀の金融緩和政策維持による安心感もあり、日本株式市場では、4月以降の海外投資家を中心とした見直し買いが継続しました。
日経平均株価は33,800円台、東証株価指数(TOPIX指数)は2,300ポイント台と33年ぶりの平成バブル後高値を更新しています。
- 米国10年国債金利は、前月比0.2%高い3.84%
経済指標が景気の底堅さを示す中、FRBのパウエル議長が年内2回の追加利上げの必要性を訴えたこともあり、米長期金利は上昇しました、米10年国債金利は3月以来となる3.7~3.8%台水準での推移が続いています。
- 日本10年国債金利は 小幅低下の0.40%
6月15~16日の日本銀行の金融政策決定会合が注目され、植田新日銀総裁が物価見通しを上方修正し、長期金利を一定水準に保つイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を一部修正するのではないかとの思惑も一部にはありました。しかし、会合では金融政策の現状維持が決定され、日本の10年国債金利はやや低下、為替市場では円安が進行しました。
- 米ドル円は5円の円安の144円台
日本銀行が6月の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める一方、米国ではFRBのパウエル議長が年内追加利上げの必要性を示したことから、日米長期金利差が拡大、為替市場では大幅に円安が進みました。米ドル円為替レートは2022年11月以来の145円台を一時つけています。インフレ継続により金融引締めの長期化観測が高まる欧州通貨も買われ、ユーロ円為替レートは15年ぶりとなる157円までユーロ高円安が進み、英ポンドも2015年以来の高値となる183円まで上昇しました。
商品市場
WTI原油先物価格と金先物価格の2022年初来の推移グラフ(2022年初~2023年6月末)
- 原油価格は月間プラス3.7%、金価格はマイナス2.7%
原油価格は5月以降、WTI原油価格で67ドルから73ドルの狭い範囲でのもみ合い展開が続いています。一方、金価格は5月はじめに高値をつけてからは、下落トレンドに入っているような推移です。
続いて、主要な指数の現状確認をしておきます。
グローバル投資市場の主要指数の確認(2023年6月末時点)
為替・金利市場
主な資産クラスのパフォーマンス状況(2023年6月)
これまでと同様に、代表的な低コスト・インデックス投信であるeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信株式会社)の価格動向を用い、各資産クラスのパフォーマンスを確認します。
以下、eMAXIS Slimシリーズにおける主要資産クラスの投資信託について、2023年6月のパフォーマンスを表示しています。
これまで同クラスの資産配分を落としていた海外投資家の見直し買いが入っている様子で、今後、日本の投資家に物色の流れがどの程度広がるのかが注目されます。
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